株式セクター
10月、世界の株式市場は上昇基調を強めました。インフレ圧力の緩和と、金融政策の転換への期待が高まったことが背景にあります。最も強い上昇を見せたのは米国と日本で、AI関連のハイテク株が引き続き投資家心理を主導しました。米国では、テクノロジー株と金融株の堅調な上昇によって、S&P500指数が6か月連続の月間上昇を達成しました。ただし、上昇は終始順調というわけではありませんでした。月初には、レアアース輸出政策をめぐる米中間の貿易緊張が再燃し、S&P500やナスダックが急落する場面もありました。しかし、インフレ率の鈍化を示す消費者物価指数(CPI)の弱い結果が発表されると、連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ観測が強まり、リスク選好が再び高まりました。
日本の株式市場も同様に上昇し、AIやテクノロジーへの熱狂が投資家心理を押し上げました。日経平均株価は16.5%を超える上昇を記録し、初めて52,000円を突破。数十年ぶりの月間上昇率を達成しました。一方、TOPIXの上昇はやや穏やかでした。ユーロ圏では、第2の経済大国(フランス)での政治的不安が勢いを抑えたものの、株式市場全体では小幅ながらも上昇を維持しました。不確実性が続く中でも、世界の株式市場が持つ底堅い強さを示す結果となりました。
2025年10月のフランスの政界は、決して穏やかではありませんでした。セバスチャン・ルコルニュ首相は10月7日に辞任しましたが、わずか3日後にマクロン大統領によって再任され、議会内の深刻な分断と継続する予算をめぐる対立の根深さを浮き彫りにしました。一方、英仏海峡を隔てたイギリスでは、FTSE100指数が1か月で約4%上昇しました。ディフェンシブ銘柄やエネルギー株が買われ、さらにイングランド銀行がハト派的な姿勢を示したことが相場の追い風となりました。インフレは依然として根強く、財政面の課題も大きいものの、投資家は中央銀行のより穏やかなスタンスを好意的に受け止めました。
一方、中国株式市場も独自の上昇基調を見せました。新たな経済指標によると、2025年第3四半期の実質GDPは前期比1.1%増と、市場予想の0.8%増を上回りました。これにより、中国経済が世界的な逆風の中でも依然として底堅い成長力を維持しているとの楽観的な見方が強まりました。
債券セクター
10月、世界の国債市場はプラスのリターンを記録しました。米国政府機関の一時的な閉鎖や関税をめぐる懸念が投資家のリスク志向を抑制する中、主要地域で利回りが低下したことが背景にあります。経済指標の発表が限られる中、米連邦準備制度理事会(FRB)は政策金利を0.25ポイント引き下げ、3.75~4.00%のレンジとしました。この決定は、先行きに対する不透明感の根強さと労働市場リスクの高まりを示すものであり、市場は月末にかけてFRBの慎重なスタンスに合わせて一部調整局面を迎えました。
米国の経済指標は、景気の減速傾向を示しました。9月のコア消費者物価指数(CPI)は前年比3.0%上昇と、市場予想の3.1%をやや下回りました。欧州では、欧州中央銀行(ECB)が3会合連続で金利据え置きを決定しました。ヘッドラインインフレ率は9月の2.2%から2.1%に低下し、ECBの目標である2%にさらに近づきました。ユーロ圏の経済成長は引き続き鈍化しており、2025年第3四半期は前期比0.2%の伸びにとどまりました。
英国の国債は、多くの先進国市場を上回るパフォーマンスを示しました。インフレの緩和とイングランド銀行の穏健な姿勢が支えとなりました。これに対し、日本国債は出遅れました。高市早苗新首相による財政拡張への懸念から利回りが数年ぶりの高水準に上昇しました。9月の物価上昇率がやや高まったにもかかわらず、日本銀行は10月の会合で短期政策金利を0.5%に据え置きました。
コモディティセクター
10月の世界のコモディティ市場はまちまちの展開となりましたが、貴金属が注目を集めました。世界経済の先行き懸念が強まる中、各国中央銀行による積極的な金購入が相次ぎ、安全資産への需要を一段と押し上げました。国際通貨基金(IMF)の最新の世界経済見通しでは、保護主義的圧力の強まりを背景に、世界経済成長率が2025年に3.2%、2026年に3.1%へと減速する見通しが示されています。
金価格は一時、史上初めて1トロイオンス当たり4,000ドルの大台を突破しましたが、その後はやや調整局面に入りました。銀も過去最高値を更新し、地政学的リスクの高まり、旺盛な産業需要、供給逼迫を背景に上昇を続けました。産業用金属も力強い反発を見せました。グリーン経済への移行に伴う需要拡大と供給制約の継続が追い風となり、とくにアルミニウムは1トンあたり2,900ドルを突破し、過去3年で最高水準を記録しました。世界的に消費が急増したことが背景にあります。
こうした金属相場の強さは、エネルギー市場の軟調を一部相殺する形となりました。原油価格は月間で2%超の下落となり、中東リスクの一時的な緩和にもかかわらず、供給過剰懸念が相場を圧迫しました。農産品やソフトコモディティも厳しい環境に直面しました。収穫量の改善、貿易摩擦、在庫の潤沢さが上値を抑える要因となる中で、際立った上昇を見せたのは大豆など一部の品目に限られました。
為替セクター
10月の為替市場は、地政学的緊張と根強い経済的不透明感に左右されました。米ドル指数は2%強上昇しました。これは、パウエル議長が12月の追加利下げ観測を抑える発言を行い、安全資産としてのドル需要が再び高まったことが要因です。米中関係では、関税の一部見直しという前向きな動きがある一方で、競争関係の継続という対立要素も共存し、結果的にドルの強さを後押ししました。英ポンドは対ドルで下落しました。英国予算案への懸念や、イングランド銀行による利下げ観測の高まりが重しとなりました。インフレ懸念は依然として残っているものの、市場の関心は徐々に財政リスクと金融政策の行方へと移りました。
暗号資産セクター
デジタル資産市場は極端なボラティリティに見舞われました。月初に見られた暗号資産ファンドへの資金流入はすぐに反転し、10月10日には過去最大規模のレバレッジ解消が発生しました。この日だけで1,900億ドル超のレバレッジポジションが清算されました。ビットコインはこの動きに連動し、約11万4,000ドルから月中に12万4,500ドル超まで上昇した後、10月末には4.1%の下落で取引を終えました。
出所:Superfund Market Commentary – October 2025を和訳編集して記載
スーパーファンド・インベストメント・グループでは、株式や債券に加え、コモディティ市場を重視した投資戦略も採用しています。個別リスクに一元的に左右される資産配分は、大きなリスクと考えており、リスクとリターンのバランス配分で優位なパフォーマンスを発揮する戦略に注目しています。本資料は、投資勧誘を目的として作成されたものではなく、あくまで情報提供を目的としたものです。一部主観や意見が含まれている場合もあります。投資信託等金融商品にかかる最終的な投資判断は、投資信託説明書(目論見書)や他の資料などを参考に、ご自身の判断でなさるようお願い致します。