株式セクター
2025年最初の1ヵ月は、中央銀行の政策や活気に満ちた経済データとともに、ドナルド・トランプ大統領の就任を筆頭とする米国の政治情勢によって熱狂的な盛り上がりを見せました。トランプ氏が大統領に返り咲き、移民問題や通商問題で断固とした姿勢を示したことで、世界市場は乱高下で波乱の幕開けとなりました。1月の株式市場はまるでジェットコースターのような激動の展開となりました。地政学的な駆け引きやインフレ懸念、そして驚くべきAIの躍進によって急変動が続き、投資家たちを緊張の糸で張りつめさせました。予想を上回る賃金上昇と堅調な雇用統計を受けてFRB(米連邦準備制度理事会)が追加利下げを見送り、米国経済の力強さを示唆したため、米国株は慎重なスタートとなりました。トランプ大統領が減税と規制緩和を約束したことで、景気楽観論はさらに強まりました。貿易戦争が激化するとの懸念にもかかわらず、カナダやメキシコのような貿易相手国への関税緩和への期待が高まり、市場のセンチメントは明るさを取り戻しました。大手ハイテク企業とトランプ大統領の巨額のAI投資計画により、ハイテク株の成長を牽引する可能性があるとの期待が高まりました。このニュースはS&P500、ダウ平均、ナスダック100を史上最高値に押し上げました。しかし、好調だったのも束の間、中国のAI企業ディープシーク(DeepSeek)の登場により、市場、特にハイテク株は大暴落しました。ディープシークのエネルギー効率に優れたAI技術が手ごわい競争相手となったために、米国を代表するAI企業であるエヌビディアが最も大きな打撃を受け、17%の急落と6,000億ドルを超える損失を被りました。AIブームの中、メタやアップルといったハイテク大手の好決算が市場の損失を回復させ、主要指数は黒字を維持しました。
米国内の動きに続き、欧州株式市場も堅調なリターンで年初を迎え、世界の株式市場を上回りました。堅調な収益成長、貿易関税懸念の後退、有望な景気改善、欧州中央銀行(ECB)の利下げ決定などが追い風となり、ユーロ圏の株価は史上最高値まで急騰しました。月末には、欧州経済の健全性を反映し、欧州の株価指数は自信に満ちた上昇を見せました。特に、ドイツDAX指数は、好業績とユーロ圏の企業活動の再成長を示す購買担当者景気指数(速報値)に後押しされ、8%の素晴らしいリターンを記録しました。1月の総合PMIは50.2となり、12月の49.6から上昇しました。日本では、高インフレ懸念が根強く、トランプ政権をめぐる不確実性(特に関税)により、株式市場のセンチメントは主に米国の動向に左右されました。
月初めは、新たな関税発動への懸念から、自動車、テクノロジー、素材といったセクター内の輸出銘柄が売られ、米国株式市場の弱さを反映しました。しかし、米国が中国に即時関税を課さないとの報道が市場の反騰を呼び起こしました。さらに、AI投資構想「スターゲイト」(OpenAIやソフトバンク・グループなどの企業が協力して新たなAIインフラを構築する、4年間で5,000億ドルのプロジェクト)が発表されたことも、市場の回復に一役買いました。一方、日本市場はまちまちの結果となりました。トランプ大統領の関税抑制による最初の上昇は、日銀の利上げに対する懸念によって影を潜めました。中国市場では、トランプ大統領が中国の関税を完全に抑制する可能性もあり、関税の脅威が予想よりも攻撃的でないように見えたため、市場はわずかな上昇を見せました。その他の政治情勢では、12月初旬に戒厳令を敷こうとして失敗した韓国の尹錫烈(ユン・ソクヨル)大統領が逮捕されました。
債券セクター
1月は世界の債券市場にとって波乱の月となり、大幅なボラティリティと相反するトレンドが顕著となりました。地政学的な緊張、好調な経済データ、インフレ懸念が交錯し、債券は序盤から苦戦を強いられました。トランプ大統領の移民、減税、関税政策は、米国のインフレ上昇期待を煽り、債券価格の下落を招きました。しかし、中国の新しいAI技術の突然の登場によりハイテク株の大幅な売りが誘発され、その結果、債券は急速に反発し、初期の安値から素早く回復しました。米10年債利回りは上下に変動しましたが、米長期債は上昇基調で月を終えました。英国では、財政健全性への懸念と経済成長の鈍化がギルト利回りの急上昇を招きましたが、コアCPIが予想を下回る結果となりインフレ懸念が和らいだため、月末までに利回りは低下しました。
1月は中央銀行からいくつかの重要な発表がありました。日本銀行(BOJ)は金利を0.5%に引き上げ、インフレ見通しを上方修正しました。欧州中央銀行(ECB)は主要リファイナンス金利を2.90%に引き下げ、FRBはこれまで引き下げてきたFF金利を据え置きました。一方、日本の10年債利回りは、主に日銀の継続的な介入と内需刺激に重点を置いているため、他の主要国よりも相対的に低い水準で推移しました。日銀は金利を25ベーシスポイント引き上げました。
コモディティセクター
1月のコモディティセクターは、まちまちの展開となりました。エネルギー部門では、原油価格が1バレル80ドルを超えて急騰し、6ヵ月ぶりの高値をつけました。この高騰は、シリア政権の崩壊や、イスラエルによるハマス、ヒズボラ、フーシ派に対する攻撃的な行動など、中東情勢の緊迫化により拍車がかかりました。和平交渉の可能性を前に、石油輸出に使用されるロシアの石油タンカーを制限する米国の制裁が強化されたことも、供給制約をさらに助長しました。さらに、OPECは増産を延期し、慎重な姿勢を維持しました。天然ガスは、需給動向と天候予測によって変動しました。1月の米国天然ガス消費量は日量平均244.4億立方フィートと、5年平均を12%上回りました。月初は気温が低く、天然ガス消費量が増加し、生産量が減少したため、貯蔵所の引出し量が平均を上回り、ガス価格にはさらに上昇圧力がかかりました。
貴金属市場では、トランプ大統領の今後の経済政策が不透明な中、安全資産としての需要が高まり、世界各国の購入者にとって金の魅力が高まったことから、金先物が最高値を更新しました。工業用金属はまちまちの動きで、アルミニウムと銅は上昇しましたが、亜鉛は後退しました。農産物では、カカオ価格は上下に変動したものの、高値を維持しました。西アフリカの乾燥した天候による作柄の悪化が生産懸念を煽り、カカオの価格は12月に記録的な高値をつけましたが、その値段からは、やや下落しました。一方、コーヒーは、最近の降雨にもかかわらず、過去の干ばつの影響が残っているため、ブラジルの2025年の作柄に対する不安を反映し、堅調さを維持しました。これとは対照的に、砂糖市場は下落圧力に直面し、インドが輸出規制を解除する可能性があるとの報道を受け、インドの砂糖企業の株価が急騰する中、8月下旬以来の安値を記録しました。
為替セクター
2025年初頭、米ドルは急騰し、ドルインデックスは2022年11月以来の高値をつけました。この急騰は、トランプ大統領の2期目の政策が不透明な中、連邦準備制度理事会(FRB)が金利を4.25%~4.50%に維持することを決定し、堅調な経済成長が維持されることを反映したことによります。一方、ユーロは欧州中央銀行(ECB)が金利を2.75%に引き下げ、前年6月の金融緩和政策開始以来5回目の利下げを実施したため、対ドルで1.02ドルを割り込みました。因みに2024年のドイツのGDPが2年連続で減少したことが明らかになりました。同様に、英ポンドは対ドルで1.215ドルまで下落し、経済懸念が高まる中、2023年11月以来の安値をつけました。トランプ大統領の関税脅威を受け、カナダ銀行は金利を3%に引き下げ、カナダドルは1.450カナダドルを下回る5年ぶりの安値をつけました。
メキシコ・ペソは貿易の不透明感から引き続き圧力を受け、コロンビア・ペソはトランプ大統領による大幅な関税引き上げを受けて急落しました。コロンビア中央銀行がインフレリスクの上昇と世界的な不確実性を理由に利下げを一時停止したことで安堵感が広がりました。逆に日本円は、日銀の追加利上げ観測に後押しされ、対米ドルで小幅に上昇し、2018年以来最高の1月のスタートを切りました。
暗号資産セクター
暗号資産市場では、ビットコインを中心に評価額が勢いを増し、10万9,000ドルを超えて急騰し、第1四半期の力強い成長への期待が高まりました。トランプ大統領により暗号資産に関する包括的な大統領令が発令され、SEC(米証券取引委員会)が暗号資産専門のタスクフォースを発足し、暗号資産業界に対するより明確な規制枠組みが整う可能性が示されたことで、強気なセンチメントはさらに強まりました。
出所:Superfund Market Commentary – January 2025を和訳編集して記載
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